Q1.相談しやすい関係のために、どのような相性を大切にしていますか?
気兼ねなく話していただけること。これを何より大切にしています。言いにくいことほど早く伺えれば、打てる手はそれだけ多く残ります。相性は、知識や経験よりも、話していて疲れないかどうかに表れるように思います。私自身も、この方のお役に立ちたいと自然に思えるかどうかを、大事な目安にしています。
Perspectives
日頃お尋ねいただくことや、仕事で大切にしていることに、一問一答でお答えしました。気になるテーマからお読みください。
気兼ねなく話していただけること。これを何より大切にしています。言いにくいことほど早く伺えれば、打てる手はそれだけ多く残ります。相性は、知識や経験よりも、話していて疲れないかどうかに表れるように思います。私自身も、この方のお役に立ちたいと自然に思えるかどうかを、大事な目安にしています。
まず伺うのは、その方が何を望んでいらっしゃるのかです。税額や手続きの話は、そのあとでいくらでも組み立てられます。ご本人のなかでも希望がはっきりしていないことは珍しくありませんので、話しながら一緒に輪郭をつけていきます。望むことが見えてくると、選ぶべき道はたいてい絞られてきます。
「あえてお金の立場から言うと」と前置きすることがあります。私がお伝えできるのは、お金から見た一つの見方にすぎないからです。お金以上に大切なことは、どなたにもあります。ですから助言は判断材料の一つとして受け取っていただき、最後はご自身の物差しで測っていただきたい。そう思いながらお話ししています。
税務上どう考えるのが合理的かは、はっきりお伝えします。そのうえで、それを選ぶかどうかはご本人の判断です。税額が最も小さくなる道が、その方にとって最もよい道だとは限りません。有利な点と不利な点を整理してお渡しし、ご本人の希望に沿う形を一緒に探すようにしています。
ご相談くださった方に満足していただくこと。これが第一です。もう一つ、お世話になった方への義理を欠かないことも、自分に課しています。仕事は一度きりのやり取りではなく、長く続く関係の積み重ねでできています。目先の損得で動かないことが、結局は長く続ける支えになっていると感じます。
クライアントに満足していただき、あわせて納得もしていただけたときです。満足と納得は、似ているようで別のものだと思っています。結果がよくても、なぜそうなったのかが腑に落ちていなければ、次の判断はご自身でできません。説明を尽くしたうえで「わかりました」と言っていただけたときが、いちばん手応えがあります。
生まれ育った場所ですので、愛着があります。父の代からこの町で事務所を続けてきましたので、変わっていく部分も、変わらない部分も見てきました。訪ねてくださった方に「いい場所ですね」と言っていただけるのは、やはりうれしいものです。この場所で仕事を続けられていること自体を、ありがたく思っています。
目的を決めたら、そこに至る道筋を合理的に、徹底して考える。その習慣が身につきました。前提を疑い、数字で確かめ、うまくいかなければ組み立て直す。当時のやり方は、税務の仕事にもそのまま使えます。身についた知識そのものより、この考え方のほうがずっと役に立っているという実感があります。
学生時代から税理士の勉強はしていました。ただ、当時からパソコンが好きで、その趣味が高じてMicrosoftに入社したという順序です。ですから、別の道へ転身したという感覚はありません。もともと目指していた道に戻った、というほうが自分の実感に近いと思います。回り道の分だけ、見えたものはありました。
飲食店の経営が、どれだけ細かな積み重ねで成り立っているかを知りました。同時に、現場で働く方々の大変さも間近で見ました。数字の上ではわずかな差でも、現場ではまったく違う負担になります。
フランチャイズ事業はこう進めたらよいのではないか、という自分なりの考えを持つようになったのも、このときからです。
本を書くときは、その時点で考えていることを、できる限り言葉にしていきます。曖昧なままでは一行も書けませんので、書く過程で頭の中が整理されます。わかったつもりでいただけの部分も、そこではっきりします。それを繰り返すうちに自分なりの考え方が定まり、今ではあまりぶれなくなりました。
税務訴訟や民事訴訟に関わるなかで、法律的な視点を持つことの必要性を実感しました。争いになってから振り返ると、日頃の記録や文書の残し方が結果を左右していることがよくわかります。それ以来、ふだんから何に注意し、どのような準備をしておくべきかを意識するようになりました。事が起きる前の備えが、いちばん効きます。
もともと、大きな変化に強く惹かれる性分です。新しい技術が出てくると、何がどう変わるのかを自分で試さずにいられません。学生時代のパソコン、Microsoft時代のインターネット、そして今のAIと、対象は移ってきましたが、見ているものは同じです。変化の初期に触れておくと、後の判断が速くなります。
インターネットは、新しいビジネスが生まれる変化でした。これまでになかったものが次々と現れ、既存の仕事はその横に並んで残りました。AIは違うと見ています。新しいものが生まれるだけでなく、これまでのビジネスそのものが置き換わっていく。横に並ぶのか、置き換わるのか。この違いは小さくありません。
従来のモデルのままの税理士業は、成り立たなくなると見ています。作業の量に応じて対価をいただく形は、その作業が自動化されれば維持できません。代わって問われるのは、何を確かめ、どう判断し、どう説明したかです。これは税理士に限った話ではなく、すべてのホワイトカラーの仕事に起きる変化だと思っています。
意外だとは感じていません。以前から想定していたことが、いよいよ実現してきたという受け止めです。驚いているのは速度のほうで、向かっている方向そのものは予想の範囲にあります。だからこそ、来てから慌てるのではなく、来る前提で仕事の組み立てを変えておくべきだと考えています。
手間のかかる作業がなくなること自体は、よいことです。ただ、それがそのまま働きやすさになるかというと、疑問を持っています。
今の仕事には作業が多く、自分の頭で考えることを求められる場面は、実はそれほど多くありません。作業が消え、考えることが一日の中心になったとき、その習慣を持つ機会が少なかった方ほど、かえって働きにくさを感じるのではないでしょうか。負担が軽くなるかどうかは、仕事の量ではなく中身の変化で決まると思います。
反復する作業はAIに任せます。人は、その結果に間違いがないかを確かめる。そして、次に何を任せるかを決める。大きく言えば、この二つが人の役割として残ると考えています。任せる範囲を広げるほど、確かめ方と任せ方をどう設計するかが、そのまま仕事の中身になっていきます。
長い期間ではありませんが、上場企業で経営を担った経験があります。決めきれない事情や、決めた後にのしかかる重さを自分で味わいましたので、経営者の立場から考える癖がつきました。税務の正解をお伝えするだけでは足りない場面があることも、そこで知りました。判断する側に立ったことがあるかどうかは、助言の届き方に響くように思います。
まず、実現できるかどうかを考えます。難しい点が見えれば、聞こえのよくない話でもお伝えします。そこを避けて進めても、後で必ず戻ってくるからです。そのうえで実現できると考えられるなら、数字の面だけでなく、気持ちの面でも支えたいと思っています。
なぜ大きくしたいのか、その理由を伺うところから始めます。規模そのものが目的になっていることは、意外に少ないからです。人を増やしたいのか、取引先の信用を得たいのか、いずれ譲ることを見据えているのか。理由がわかれば、規模を追う以外の道が見つかることもありますし、追うべきときには進め方がはっきりします。
最も重視しているのは、経営の安定性です。株式報酬は資本政策そのものですので、いったん配ったものは簡単には戻りません。従業員への株式報酬が、必ずしも全体の意欲向上につながらなかった例も、いくつも見てきました。制度としての魅力より先に、数年先の株主構成がどうなるかを確かめるようにしています。
クライアントが暗号資産を持ち始めたことが、最初のきっかけでした。扱う以上は自分で理解しなければならないと考え、調べていくうちに関与が深まりました。その後、ITmediaのインタビューがYahoo!のトップに掲載されたことで、ご相談の幅がさらに広がりました。
現在は私自身も保有しています。各国の通貨の価値が下がるなかで、暗号資産は重要な位置を占めていくと見ています。
事業を拡大すれば、そのまま豊かになるとは考えていません。忙しさだけが増えていく例も見てきました。一方で、拡大して利益が十分に得られるようにならなければ、選べる暮らしの幅は広がらないとも思っています。ですから私にとって、事業の拡大と豊かさは、切り離せないものです。
妻は中国人ですが、結婚した当時、私は中国語をまったく話せませんでした。通訳を介したまま一生を過ごすのは違うと感じ、身につけようと決めました。北京語言大学に留学したのは、そのためです。言葉を学びに行ったつもりでしたが、実際に得たものは、言葉よりも暮らしの感覚のほうが大きかったと思います。
私は大きな変化に惹かれます。中国はこの30年余りで、すっかり姿を変えました。初めて訪れた頃を知っているだけに、ここまで力をつけたことには驚くばかりです。次に何がどう動いていくのか。それを見続けられることを、楽しみにしています。
私の印象では、中国は日本以上に、身内や仲間という意味での「ウチ」を大切にします。そこに入れてもらえるかどうかで、話の進み方も、任せていただける範囲も変わります。内側に入れば、驚くほど率直に話してもらえます。時間はかかりますが、そこを飛ばして先に進もうとすると、たいていうまくいきません。
食習慣と気候が合うことです。旅行として楽しい場所と、暮らして心地よい場所は、必ずしも同じではありません。税制や制度の条件も当然見ますが、そこだけで選ぶと長続きしないと感じています。実際に滞在してみて、体が楽かどうか。最後はその感覚を信じるようにしています。
出社している方も、リモートで働く方も、分け隔てなくやり取りできるようにしたい。その思いが出発点です。離れて働くと、見えないことがそのまま不信につながりやすく、かといって管理で埋めようとすれば窮屈になります。信頼を保ちながら、どこまでを仕組みで支えられるか。その問題意識から生まれたものです。
それまでの価値観では思いもよらなかったことに出会えます。自分が当たり前だと思っていたものが、実は数あるやり方の一つにすぎなかったと気づかされます。その経験を重ねると、違う考えに触れたとき、すぐに否定しなくなります。新しい視点は、たいてい居心地の悪い場所から入ってくるものだと思います。
妻と、妻の両親が元アスリートです。中国でセカンドキャリアの話を聞く機会が重なり、日本ではどう考えるべきかに関心を持つようになりました。競技を終えた後の時間のほうがはるかに長いにもかかわらず、その準備は後回しにされがちです。税務や資産の面から関われることがあると考えています。
アスリートについては、生涯にわたってそのスポーツに関わり続ける、という視点で考えています。競技で培ったものを、指導や普及といった別の形に移していけるかどうかが鍵になります。
会社員の方はむしろ逆で、同じ仕事を続けることよりも、ご自身の持っている力を次の仕事へどうつなげるかが大切です。どちらも、肩書ではなく中身を移す作業だと思います。
肩書、とりわけ以前の会社名は、次の仕事で役立つものとは考えていません。通用していたのは会社の看板であって、そのままご自身の力だとは限らないからです。よい会社で働いてきたという自負がある方ほど、そこにとらわれやすいように見えます。誇りは持ちつつ、いったん脇に置いて向き合えるかどうかが分かれ目だと思います。
すべての方に必要なものではありません。税務の面で有利になる場面はありますが、その分だけ手間と責任も増えます。勤めながら力を発揮できる方もいれば、自分で決められる環境でこそ伸びる方もいます。制度の損得より先に、どちらの働き方がご自身に合うかを考えていただきたいと思います。
気が合い、相性のよいクライアントのお役に立ちたいと思っています。その方が望むことを実現するお手伝いができれば、それがいちばんの仕事です。数を増やすことは考えていません。クライアントも私も、それぞれにやりたいことがかなう暮らしを続けていけたら。その形を保つことが、これからの目標です。